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狭い部屋は、何でも手の届く位置にある。
彼は私を抱き抱えたまま、コタツ件テーブル上のリモコンを操作して、プッツリとテレビを消してしまった。
「ああっ、見てたのに…」
「黙れ。
生意気な口は…こうしてやる」
「う…」
そのままの格好で、私は畳の上に横たえられた。ハダカ電球の灯りの下、口づけながらサッサと服を剥がされる。
「へ…へめてあはひふぉ(せめて明かりを)」
「ダメだ、もっと…ちゃんと俺を見ろ」
「そんなあ…ぅ…」
形ばかりの反抗を見せながらも、切なそうな声と噛みつくような激しいキスに、いつしか酔わされている…
ポイポイと次々に放り投げられている私の服を横目に眺めながら、私の心は別なところをさまよっていた。
…近頃、抱かれる度に考えている。
彼の中には、時に強く激しく情熱的で、時に血も凍るように酷薄、そして時に壊れそうなほど繊細な、3つの心が同居している。
本人だって、ひどくやっかいで苦しかろう。
これは全くの想像にすぎないが。
彼の周りにいた女の子達は、今の私と同じキモチを抱いたことがあるんじゃなかろうか。
そりゃあ彼女達にだって、彼の言うような全く打算がないとは思わない。
しかし一方で、『割りきった』態度を示すのは、彼の側にいたいがため……でもあったんじゃあないだろうか。
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