チチキトク

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チチキトク

 梅雨も明け、カラッと晴れた夏の夜。  ビィィィン、ビィィィン……  未明の時刻、妙な音で目を覚ますと、彼の仕事用携帯の1つがテーブル(冬はコタツ)の上で震えていた。 「……カチョー…鳴ってますよぉ…」 「……ん~…出といて…」  寝惚け目を擦りながら彼の脇腹をつつくと、甘えた声が返ってきた。 「バカ言わないでくださいよぉ」  もう一度、今度は強めに揺さぶって、彼をユサユサ揺り起こす。  藤城課長は、寝起きがとても悪いのだ。 「…んあ?……ああ、 “家” の方だ…」  まだ半分夢の中といった様子で、私に軽く口づけると、彼はのっそりとベッドを降りた。 「何だ…どうした?こんな時間に……  え、まだ10時だと?  バカかっ、こっちは朝の4時だ!  ん、何だと?  ………そうか、それで……」  20分ほどたっただろうか。  再び眠りの中にいた私は、今度は彼に揺り起こされた。 「……父が…倒れた」
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