課長の正体

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「ええええええっ!? 課長が…グループ総師のご子息ぅっっ!!」 「呆れたな。ウチの社員で知らないの、オマエくらいのもんだぞ」 「イヤ~私、藤城課長のコトなんて全く興味なかったもんで」 「…………」  シマッタ。  命の恩人に、口が滑ってつい本音を…  慌てて口を覆ったものの、何だか課長、ブスッとしてしまった。 「……大体さ。  七光りでもなけりゃ、この若さで大企業の管理職なんかやってるかよ。  考えたら分かるだろ、フツー」  藤城課長は姿勢を崩すと、急に砕けた口調になった。 「うっ……分かりません」  ホカの職場を知らないもん。  お酒が回ってきたのか、藤城課長は少し饒舌になっている。  守ってもらった直後だからなのかもしれないが、課長の笑顔は少しだけ……素敵だ。  そういえば。 「でも課長は、どうして私なんかにあんな大金を?」  よく考えたら、これは私にとっての最重要事項だ。  だってだよ?  パニックの中すっかりスルーしていたが、先ほどの『俺の物』発言のあと、ポンと大金を出してくれて…  もしかしてカチョー、私の事を? 「ああ、そうそう。 そのことで……ちょっとここにナマエ書いてくれ」 「? ハイハイ。 しかしそれとこれとは一体なんの関係が」  釈然としないまま、私はテーブルに拡げられた紙の余白にサインした。
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