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医師が説明を終えて退室した後、彼はしばらく無表情のまま、静かに病床を見下ろしていた。
父親との対面が “怖い” のだと言った彼。
今のうつろな表情からは、何も伺い知ることができない。
やがて。
「あの…ところで
プロジェクトの件ですが…」
彼を囲んだ中の一人が、躊躇いがちにビジネスの話を始めると、一団からは次々と声が上がりだした。
そうして。
彼が感傷に浸る暇もないうちに、それらは彼を中心に黒い一塊の中心となって、ゾロゾロと病室から移動し始めた。
「あ、あの……貴彪様、こちらのお方は?」
集団の末尾にいた男が気遣って尋ねると、彼は思い出したように私を振り返った。
「ああ、
俺の……大事なヒトだ。
丁重にな」
「はっ」
男に言いつけ、彼は完全にドアの向こうへと消えていった。
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