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ピッ、ピッ…
大勢の男達が居なくなり、すっかり静かになった病室には、老総帥に繋がったたくさんの機械の測定音が響くだけ。
たった3人、眠りっぱなしの老総帥と、付き添いの女性(レイカ嬢の母親と思われる)、そして私が取り残された。
さっきの男から迎えが来るまで待つようにと言われていた私だが、何となく身の置場がない。
そんな中、
彼が散々苦しめられて、それでも尊敬してやまないお父さん、藤城グループ総帥は一体どんな人なのか。
せめて一目見ておきたいと、そっと病床に近づいた。
前に見たのは一度きり、2月のパーティの夜で、あの時はずっと遠くから眺めただけだったが____
患者用の薄青色のガウンを着、たくさんの管をつけられて眠る老人は、威厳に満ちたかつての姿には程遠い。
日に焼けた浅黒い顔には苦労の痕が窺える。
眠っているくせにまるで怒っているみたいに、眉間には深い皺が刻み込まれている。
細面で、少し繊細な風のある藤城課長よりは、少し荒々しいイメージか。
“総帥” なんて肩書きがなければ、どこにでもいる、ちょっぴり頑固なお爺ちゃんにしか見えない。
この人も目を開けたなら、あの燃えるような金色の瞳をしているかしら。
思わずクスリと笑みが漏れた。
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