チチキトク

9/20
前へ
/283ページ
次へ
 と_____    「寂しいものでしょ、このヒト。  力を無くした途端にね、一人ぼっちになっちゃった…」  今まで隅のソファに座ったままで、彫像のように押し黙っていた女性(ヒト)が、力なく私に微笑んだ。 「す、スミマセンっ」  見咎められたと思った私は、慌ててベッドから離れたが、 「あら、いいのよ」  そう言って気さくに笑いかけ、私をソファに誘った。 「…そうですか、やっぱりレイカさんの」  彼女はやはりレイカ嬢のお母さん(サヨリさんという)だった。  看病疲れなのだろうか、今は少し窶れているが、彫りの深い、明るい顔立ちは相当の美人で、開けっぴろげな性格はレイカさんとよく似ている。  私達はすぐに打ち解けた。 「ええ、そう。  貴女、あの子のこと知ってるの?」 「はい。あの、私……」  私は大まかに成り行きを説明した。   「そう、あのお屋敷に住み込みで… フフッ、なら大変ね」  「はい、その通りですっ!」  きっぱりと答えた私に、サヨリさんは苦笑した。 「それで…貴彪さんと?」 「え…ええ、まあ……」  ふっと顔を綻ばせる彼女に、今度はモゴモゴと口ごもる。
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4705人が本棚に入れています
本棚に追加