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サヨリさんは、彼の父親のパートナーだ。
何だか悪いことをしている気がして、私はモジモジと下を向いた。
が、彼女はそれ以上、その話題に触れようとはしなかった。
その代わりに、娘のレイカさんのことをしきりに訊ねられた。
「あなた、あのワガママな娘と仲良くしてくれてるのね。あの子元気でやってるかしら?
あなたに迷惑かけてやしない?
真面目に…はしてないでしょうね」
「あー、イエ。そんなことは…ないですよ」
所々言葉を濁しながら、レイカさんの近況を話してやると、彼女は心底ホッとしているようだった。
「私……あの子に嫌われちゃったから」
最後にポツリと言った横顔に、私から掛けられる言葉はなかった。
…………
結局彼はその日戻らず、夕刻、ホテルマンが私を迎えに来てくれた。
窓からエスニックなお城が見える、これまたお城みたいに豪華なホテル。
『丁重に』
藤城課長が一言告げただけで、私はまるでお姫様みたいな扱いだった。
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