チチキトク

13/20
前へ
/283ページ
次へ
 それから丸2日間。  ホテルの部屋に置かれた荷物が解かれることはなく、藤城課長は一向に戻ってこなかった。  ホテル側は、通訳兼ガイドさんまで付けてくれていたが、サスガに観光する気にはなれない。  代わりに私は、毎日弥一郎様の病室に通っていた。   その間、弥一郎様が目覚めることはなく、私は付き添いのサヨリさんと一日中話をして過ごしていた。  銀座でホステスをやっていたという彼女は、とても話上手で、ちょっと立ち入ったヘビーな内容でも、あっけらかんと話してくれる。  それは、藤城家のことをあまり知らない私にとって、とても重要なことだった。 ________  レイカはね、私の連れ子なのよ。彼とは血が繋がってない。  やっだ、解るでしょ?私と彼、年が30も離れているんだもの、身体の関係はもうないの。  アノ子が小学校6年生の時、弥一郎とはお店で知り合ったの。  ……母娘家庭だったのよ。  最初はモチロンおサイフ目当て。  アノ子を育てる為に、気に入られようと必死だった。  でもねぇ、そのうち段々本気になっちゃって。    “財産目当てなんだろう” って周りの人間から散々、本人にさえ言われたわ。  全く、ここの人達ったら、ろくなものじゃないわ。
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4705人が本棚に入れています
本棚に追加