チチキトク

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 何だか、レイカさんに聞いた印象とは随分違う。  ここにいるのは、例え喧嘩別れして、随分離れてしまっても、心の奥でいつも娘を心配してる、愛情深い母親だ。  だって、聞いてたら分かるもの。  彼女の名前を口にする度に口許が少し綻んで、ほわっとあったかいニュアンスが混じるの。  やっぱりいいな、おかあちゃん…  レイカさんが…羨ましいや。  シンミリと聞き入っていると、ふと、彼女が悔しそうに眉をしかめた。   ________  私ねえ、こうなること、分かってた。  貴彪さんが来て以来、あれだけいた彼の部下、親戚縁者は誰も様子すら見に来ない。ここへ足を運ぶのは、見ず知らずのあなただけ。   ひとたび力を失えば、あの人の側にはだあれも残らない。  あそこに眠っているのは、延命のための管をいっぱい巻き付けられた、一人ぼっちのお爺ちゃん。  ま、自業自得なんだけど。  それでも___  私だけは側についててあげなくちゃって…思うのよ___ 「ま、好きになっちゃったんだから、仕方がないわよねえ」   そう言うと彼女は、淋しそうに微笑んだ。
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