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何だか、レイカさんに聞いた印象とは随分違う。
ここにいるのは、例え喧嘩別れして、随分離れてしまっても、心の奥でいつも娘を心配してる、愛情深い母親だ。
だって、聞いてたら分かるもの。
彼女の名前を口にする度に口許が少し綻んで、ほわっとあったかいニュアンスが混じるの。
やっぱりいいな、おかあちゃん…
レイカさんが…羨ましいや。
シンミリと聞き入っていると、ふと、彼女が悔しそうに眉をしかめた。
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私ねえ、こうなること、分かってた。
貴彪さんが来て以来、あれだけいた彼の部下、親戚縁者は誰も様子すら見に来ない。ここへ足を運ぶのは、見ず知らずのあなただけ。
ひとたび力を失えば、あの人の側にはだあれも残らない。
あそこに眠っているのは、延命のための管をいっぱい巻き付けられた、一人ぼっちのお爺ちゃん。
ま、自業自得なんだけど。
それでも___
私だけは側についててあげなくちゃって…思うのよ___
「ま、好きになっちゃったんだから、仕方がないわよねえ」
そう言うと彼女は、淋しそうに微笑んだ。
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