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3日目の夜、藤城課長がやっとホテルに戻ってきた。
どうにか片がついたのだと、寝不足気味の疲れた顔で私に言った。
「こちらでのプロジェクトは取り敢えず休止。
そもそもが親父の独断で始めた、無茶な計画だったんだ」
何やら難しい話の後、彼はフッと頬を緩めると、私をひょいっと抱き上げた。
「わっ…」
フワリと身体が宙に浮き、慌てた私に、すぐ横にある彼の顔がクスッと笑いかけた。
「こちらの衣装か、良く似合う。
シェヘラザードみたいだな」
薄絹のベールに指をサラリと滑らせると、彼はそのままバスルームに向かおうとする。
「ち、ちょっと待ってくださいよ、王様」
「何故?
この3日間、俺は早くオマエを抱きしめたかった。
時間が惜しい、一緒に入ろう」
疲れている彼はセッカチだ。
暴れる私を片手に抱き直し、カチャリとバスのドアを開ける。
「や、待ちなさい!ストップ、ストォップゥ!」
私は、早々とドレスを脱がそうとするフシダラな手をやっと止めた。
「何だ、不満か」
彼の眉尻がピクりと動いた。
不穏な声色にオノノキながらも私は、勇気を出して、彼にとって面白くない話を紡ぎ出す。
「かっ…カチョー、まだ貴方にはすることが残っているハズです。
四葉をお抱きになるのは…その後です」
「何だァ?それは」
「ひっ…」
世にも恐ろしい目付きで、私を睨み付ける藤城課長。
不機嫌な大王様に、にわかシェへラザード、四葉は今にも処刑されそうです。
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