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しばらくの間じっと老人を見つめていた彼は、やがてポツリと呟いた。
「…こんなに小さかったんだな。
ガキの頃は、決して越えられないものと、ひどく大きく見えていたが…」
「貴方が大きくなったんですよ。
ね、手を…握ってみてください」
「やだよ」
彼はプイッとそっぽを向いた。
「ダメっ」
こだわりで、こんなにも大胆になれるものなのか。
私は彼の手首を握ると、無理矢理に父親の皺だらけの手の上に引いていった。
「バ、バカ止せ、やめろって……ん?」
「あ!」
すると何と。
まだ意識が戻っていないはずの手が、ピクンと動いたじゃあないか。
「ホラね?
弥一郎様には、ちゃんとあなたが分かってるんですよ。
お父ちゃんとは、そういうものです」
偉そうに腕組みをし、エッヘンと威張ってみせる。
すると彼は、戸惑いを隠せないといった様子ではにかんで……
「フン、どうだか」
私と目が合うと、慌てて窓側に顔を向けた。
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