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それからちょうど1週間で、私達は帰国した。
帰りの飛行機の中、彼はこれからのことを話してくれた。
一時は命の危険もあった藤城弥一郎翁だが、何とか持ちこたえた。後は病状の安定を待ち、極秘裏に日本へ移されるそうだ。
「ただ…
残された時間は、もうあまりないんだ」
彼は、小さな窓の外を眺めて無表情に呟いた。
帰国次第、彼は本社の専務となり、経営の実務を学ぶ。
そして来年の春には、京極瑠璃子との結婚式を執り行い、それと同時に代表取締役として、グループの頂点に立つそうだ。
「へ、へぇ~。
すすす…スゴいじゃないですか」
予想はしていた事とはいえ、それを聞いた私は動揺を隠せないでいた。
ハッキリと狼狽えている私を見て、彼はフフッと笑ってみせる。
「どうした?寂しいか」
「ば、バカな!オニアクマが居なくなって大喜びです。あーあ、次は優しい上司だといいのにな~」
「んだとコラ、せっかく助けてやったのに」
「その分イタダかれてますけどね~」
「悦んでるくせに」
「そ、そんなコトはっ……」
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