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ムキになった私を、“はいはい” といなすと、彼は私を引き寄せて、自分の肩に凭れさせた。
「何も変わらない…心配するな。
お前はずっと俺の傍にいろ」
「…うん」
いつ見てもキレイな女性のように細い指。
私はそれを両手で握ると、そっと自分の頬に寄せた。
やがて彼が眠たげに、色っぽい声を耳に寄せた。
「少し、眠ろうか」
毛布を一枚、キャビンアテンダントに頼むと、二人で分けあってそれをかけた。
その下で、彼と再び手を繋ぐ。
絡めた指をぎゅっぎゅと握っているうちに、彼はフッと眠りに落ちた。
藤城貴彪はもう、出会った頃の “私のカチョー” ではなくなってしまうんだ。
私と彼を繋ぐ鎖が
ひとつ
切れた。
翌日____
およそ2週間ぶりに復帰した職場は、大変な騒ぎになっていた。
「四葉ちゃん知ってた?
藤城課長、本社に異動なんだって!
いよいよって事らしい」
「噂だけどよ。総帥、相当悪いらしいぜ?上層部は隠してるけどさ…」
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