雨に打たれて

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 そして、『何も変わらない』と言っていた彼は、格段に忙しくなった。  家に戻れない日も増えて、戻ってもまたすぐに出掛けたり、自室で仕事をしている日が多かった。  オーダーのお夜食を運んでいくと、覚えながら処理する案件が山積みなのだと、精力的に笑いかけた。  かといって、私の部屋に来なくなったわけではない。  以前より頻度は減ったものの、相変わらず予告もなく “夜這い” (本人は『逢瀬だ』と言い張っているが)に、朝方にでもひょいとやって来た。  そんな時は、やっぱり彼にも余裕がないのか。  猛々しく、壊れそうなほどに抱く日もあれば、ただ甘えてくるだけの日もあった。  こうして、帰国から1月ほどたったある日____  思えば私がこの家にきて、ちょうど1年がたった日だった。  彼が突然、私に言った。 「その、少し先の話だが…」  少しの躊躇(ためら)いの後、彼は思い切ったように顔を上げた。 「お前、俺の結婚後は、あの屋敷に居づらいだろう。だから…… 会社の近くに部屋を借りよう」 「か、かかカチョー。それは 一体どど、どういうコトです!?」  驚きのあまり、何度も吃りながら聞き返した私に、彼はふと、切なそうに目を細めた。
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