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そんな、かりそめの幸せが続いてた、ある日曜日の事だった。
季節は晩秋。
私は、絶え間なく降り積もっている庭の木の葉を、竹箒で掃いている。
弥一郎様の帰国以降、屋敷には随分と人が増えた。
運転手に執事、私設秘書にエトセトラ…
私にとっては初対面だが、彼らは昔からここに仕えていたのだから、彼らにとっては寧ろ私のほうが新顔だ。
私が “トノのお手付き” だということは、既に知れわたっているようで、変に気を使われるのが妙に居心地悪かった。
だって、私はメイドさん。
でないと、この家にいる理由が無くなっちゃう。
集めた葉っぱで、お庭番のケンちゃん達とサツマイモを焼こうとしていた時だった。
「美咲」
彼が私を探しにやって来た。
珍しく昼からオフらしい。
「デートするぞ、付いてこい」
「ほ?」
私はおイモをあきらめて、例のメイド服から着替えると、彼の待つ門前へと向かった。
柵の前にはタクシーではなく、彼のベンツが控えていた。
私の姿を見つけると、車の前にいた運転手が後部座席の扉を引いてくれる。
すでに車内にいた彼が行き先を告げると、車は静かに走り出した。
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