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「あのー、今日は一体どちらへ?」
すっぼりと広いシートに収まった私が訊ねると、
「介護施設。バーさんの所だ。
お前を1度、会わせておきたい」
彼は、少し照れくさそうに言った。
________
そのホームは、茨木方面に向けて国道を1時間ほど走った丘の上にあった。
最高のサービスを受けられるので有名な所なのだと、話好きな運転手さんが教えてくれた。
景色は山深くなってゆく。
美しく紅葉した山の景色に見とれていると、少し歩こうと彼に誘われた。私達は、少し離れた駐車場で車を下りると、施設のアプローチに続く散歩道を上がっていった。
運転手さんが言ったとおり、そこはちょっとしたホテルのような立派な施設。
引き戸を開けると、1人部屋のベッドの上に、ちんまりと白髪のお婆ちゃんが鎮座していた。
タカトラさんが声をかけると、姿勢を正し、三指をついて礼をする。
「これはこれは大旦那様。
こんなに立派な所に入れて頂いて…ババアは幸せございます」
(少しボケててな…俺を親父だと思ってる)
彼は私に耳打ちした。
「バアサン、貴彪だよ。今日は俺の大事な人を連れてきた。生涯のパートナーになる女(ひと)だ」
『生涯の』というフレーズに、ニンマリしながら私はペコリ頭を下げた。
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