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「ハイハイ…」
お婆ちゃんは、ただニコニコと笑っている。
何だか、ちっちゃくて可愛らしいお婆ちゃんだ。
かつて彼の、唯一の心の拠り所だったヒト。
大抵の他人に威嚇的な彼が、ここでは随分とリラックスしている。
「あれまあ、貴彪坊っちゃんは。
さっきオヤツにしたばかりでしょうに…」
「違うっ、それは俺が見舞に持ってきたの!
あと、坊っちゃんはやめろって…」
………
しばらく2人の間のちぐはぐなやり取りが続くのを、私は微笑ましく見守っていた。
と、
彼が急に、胸ポケットをまさぐり始めた。
「電話だ」
震えるスマホを取り出し、耳に当てる。
「…どうした。今日は用事があると言っておいたはずだが…
ん、何だと?それで……」
どうやら込み入った話らしい。
彼は、手振りで私にここで待つように示すと、慌ただしく部屋を出ていった。
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