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その背中に小さく手を振った私が、もう一度ベッドを向いた時だった。
「オイ、ちょっと」
エ。
空耳か?いやでも今確かに…
一瞬耳を疑った私は、ベッドの上の人物をまじまじと見た。
間違いない。
先ほどまでニコニコと笑っていたお婆ちゃんが、能面のような無表情で私を見据えている。
「あんた、女中だろ」
さっきまでとはうって変わって、目の焦点の定まったお婆ちゃんが、白けた声で言い放つ。
え、え?何これ、どういうコト?
「悪いことは言わないから、『アイジン』なんて、止めときなさい。
貴彪はね、京極の姫さんを貰うんだから」
「お婆ちゃ……」
豹変ぶりに戸惑う私に、彼女は冷ややかに続けた。
「歪んだことはね、するもんじゃないんだよ。
…更なる歪みを呼ぶからね」
ユガミ?
一体なんのこと?
サッパリ意味は分からないが、とにかく私達に反対だってコトだけはハッキリと分かる。
ムムッ、彼の前ではいい顔をして…
初対面の私に、何て意地悪なことを!
私は負けじと言い返した。
「それって、どういうコトですか?」
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