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「どういうって…そういうコトさ。
考えてごらん?
確かに貴彪は今、お前に夢中かもしれない。だけど、本妻と長く一緒にいる間には、情を通じることだってあると思わないかい?」
「な…」
なんてイジワルなコトを!
私は憤概した。
「彼、浮気はしないって言ってくれました!」
お婆ちゃんはやれやれと肩を竦めた。
「世間じゃ浮気はお前の方さ。
それはまあいい。
今の人は、こういうのかね。『愛してる』?
付き合って半年くらいかね、男が最高に熱を上げるのは。
でもねぇ、長い間のうちに貴彪の気が絶対に変わらないと思うかい?
あの子、京極の姫様だって…
二人は知らない仲じゃない。
長く一緒にいることで、通じ合う情はあるもんさ。
さしずめオマエと貴彪も、初めはそんなもんだったろう?」
「うっ…そんなことは…」
あるけど。
二の句を告げないでいると、お婆ちゃんの能面がぐにゃりと悲しみに歪んだ。
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