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え?
まさか…
目の前が、にわかに暗くなった。
それがもしも真実ならば、一番信じていたお婆ちゃんが、実は母親を彼から奪った張本人だったってことになる。
そんなのって、とても、とても許せない。
私は我を忘れて、お婆ちゃんを問い詰めた。
「なんで?
なんでそんなヒドイことするの?
彼はね、お婆ちゃんだけを信じてるんですよ!?
今日だって、実の父親ではなく、あなたに私を紹介してくれようとして…
あ、あのひとはねえ、貴女を本当のお婆ちゃんだと…そう思っているんですよぉ」
涙が溢れて止まらない。
金切り声が、廊下まで響かない事を願った。
それには答えず、お婆ちゃんは静かに続けた。
「…1度だけ。
一目だけでも貴彪に会いたいと、あの子が屋敷に忍び込んだことがあった。
私が見つけて、追い返そうとしていたところに、偶然貴彪が来てしまってね。
とっさに娘だって偽(いつわ)らせたよ。
それでかねぇ…」
もう、何も言えなかった。
酷すぎる。
彼の住んでいる世界は、なんて冷ややかなんだろう。
もっとも信頼していた人は、実は彼を愛情から遠ざけた張本人で、今もまた、彼から私を引き離そうとしている。
そんな人の言うことなんか、絶対に聞いてやるもんか!
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