チチカエル

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 お返しに、彼の襟元、隠れるか隠れないかの辺りの浮き出た筋の窪みを狙い、カプッと噛んでチュウッと吸い付く。  少し意外そうな顔をして、紅い噛み跡に触れた彼は、すぐに艶めいた、私をクルリと俯(うつぶ)せさせた。 「あと半分」 「やっ…」  そういうと彼は背中側を上から下にかけて、また丁寧に刻印(マーク)してゆく。  その度にピクンと跳ねる振動を愉しむように、強弱をつけながら。 「どうした美咲、ヤキモチなんて。今夜は本当におかしいぞ。まあ、こういう変化は、歓迎すべきところか」  全身に紅を散らし終えると、彼は私に覆い被さるようにして、左の耳に囁いた。  プルプルと首だけを振って答えると、ぐっと腰が引き上げられる。 「ウソをつけ。妬いているんだろう?…可愛いな」  期待にゾクッと寒気が走る。  それでも頭(かぶり)を振り続けていると、 「そうか。強情なコには…お仕置きだな」  彼はわざと冷たい声で言い放つと、後ろから、欲情に滾り、硬く張ったソレを私の内腿に押し当てる。 「やっ、ごめんなさ…」  言うより早く、彼は一気に私の奥を突き上げた。 「もう遅いよ」  甘い声色とは裏腹に、彼はグリグリと腰を押し付けて、更に奥を刺激する。 「あっ、あああっ」  襲いかかる快感に堪えきれず、大声を上げても、二人きりの離れでは誰に聞き咎められることもない。
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