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私は、部屋着姿にコートだけ羽織ると、彼が今来ているという、地下鉄の駅出口に駆けつけた。
階段の端に座り込んでいたその人は、私の姿を見つけると、両手を広げて駆けてきた。
「みっ……、美咲ィ~~~」
「お父ちゃあ~~~~ん!」
この世にたった1人の家族、父との感動の再会。
夢にまでみたその人にもしも巡り逢えたなら…
私はどうするか決めていた。
キエエエエエエエッ!!!!
「う、うわあぁっ!」
父とぶつかる5秒前。
充分に間合いを詰めた私は、持参の竹光(替わりの傘)をヤツの脳天にめがけて振り降ろす。
今こそ、高校時代、女子剣道部で鍛えた技が炸裂する時____
と思いきや、
パシィッ!
命中の寸前、父は切っ先を両手で挟んだ。
「な、何をするんだ美咲っ」
私はそれを凪ぎ払い、すぐさま2撃目の構えを取る。
それを見て、まっ青に顔色を変えた彼は、私に背を向けて逃げ出した。
「逃げるな待てぇっ、そこへなおれ!」
「ま、まて美咲、話せば分かる」
「問答無用!」
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