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「……美咲、なーんか変わったよなぁ。
いつからお父ちゃんにそんな口聞くようになったんだ?
悪い男とでも付き合ってんじゃねえのか?あ?」
上目使いに私の顔色を伺っていた父は、いじけたように下唇をつきだした。
「う、うるさいっ。
そんなトコだけ父親面しないの!
さっさと、質問に答えなさーいっ」
確かにこの尋問口調……
父の勘繰りは、あながちハズレてはいない。
私の剣幕に気圧されて、彼はボソボソと白状し始めた。
「ダチの会社が…倒産寸前でよう。
『ここにサインするだけだ』って頭下げられて……
大の男が泣いて頼むんだ、断れねえだろ?フツー」
やっぱり、そんな事だろうと思った。
気を取り直し、私は再び父を詰問した。
「で?何で契約書に私の名前があったの?」
父は今度こそしゅんと項垂れた。
「うう…
二人して金融屋に行ったらよ、俺の名前だけじゃ『信用』ないからダメだって。
そしたらダチが、大企業に娘が勤めてるって、前に自慢したのを覚えててよ。金融屋に話しちまって、『それでいこう』って。
『迷惑はかけない』って言ってたんだよぉ?」
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