チチカエル

11/17
前へ
/283ページ
次へ
 「……美咲、なーんか変わったよなぁ。  いつからお父ちゃんにそんな口聞くようになったんだ?  悪い男とでも付き合ってんじゃねえのか?あ?」  上目使いに私の顔色を伺っていた父は、いじけたように下唇をつきだした。 「う、うるさいっ。  そんなトコだけ父親面しないの!  さっさと、質問に答えなさーいっ」  確かにこの尋問口調……  父の勘繰りは、あながちハズレてはいない。    私の剣幕に気圧されて、彼はボソボソと白状し始めた。 「ダチの会社が…倒産寸前でよう。 『ここにサインするだけだ』って頭下げられて……  大の男が泣いて頼むんだ、断れねえだろ?フツー」  やっぱり、そんな事だろうと思った。  気を取り直し、私は再び父を詰問した。 「で?何で契約書に私の名前があったの?」  父は今度こそしゅんと項垂れた。 「うう…  二人して金融屋に行ったらよ、俺の名前だけじゃ『信用』ないからダメだって。  そしたらダチが、大企業に娘が勤めてるって、前に自慢したのを覚えててよ。金融屋に話しちまって、『それでいこう』って。 『迷惑はかけない』って言ってたんだよぉ?」
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4706人が本棚に入れています
本棚に追加