4706人が本棚に入れています
本棚に追加
気がつけば、もう深夜1時に近い。
私達は日を改めて、これからの事を話そうということになった。
「じゃあ……またな。
父ちゃん、近くのカプセル(ホテル)に泊まってるからよう」
「うん、気をつけて」
終電は、もうとっくに行ってしまった。
ちょっと勿体ないけれど、タクシーを拾って私はお屋敷へと戻る。
これまでの経緯から、お金に関しての信用はゼロだから、通帳と印鑑はしっかり取り上げておいたし…
お父ちゃんのことは、これでもう大丈夫。
ただ、私があそこに居られる理由は、完璧に無くなってしまった_____
屋敷に帰り着くと、時計はもう2時を回っていた。
明かりを着けるのすら億劫だ。真っ暗な廊下をそろそろと、足元を確かめながら部屋に入ると…
「遅かったじゃないか」
真っ暗な部屋のベッドから、黒い影がゆらりと立ち上がった。
「あ…」
彼が来て、待っていたようだ。
低く抑揚のない声は、彼の機嫌のバロメーターの最低値を指している。
叱られる!
私はぎゅっと目を瞑った。
しかし。
闇の中の長い腕は、私をふうわり、優しく抱きすくめただけだった。
「居なかったから…心配した」
切なげな声が、大きな体躯が震えている。
「あ、あの、実はね…」
弁解しようと開いた口に、彼は細い人指し指を押し当てた。
最初のコメントを投稿しよう!