チチカエル

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 気がつけば、もう深夜1時に近い。  私達は日を改めて、これからの事を話そうということになった。 「じゃあ……またな。  父ちゃん、近くのカプセル(ホテル)に泊まってるからよう」 「うん、気をつけて」  終電は、もうとっくに行ってしまった。  ちょっと勿体ないけれど、タクシーを拾って私はお屋敷へと戻る。  これまでの経緯から、お金に関しての信用はゼロだから、通帳と印鑑はしっかり取り上げておいたし…  お父ちゃんのことは、これでもう大丈夫。  ただ、私があそこに居られる理由は、完璧に無くなってしまった_____  屋敷に帰り着くと、時計はもう2時を回っていた。  明かりを着けるのすら億劫だ。真っ暗な廊下をそろそろと、足元を確かめながら部屋に入ると…   「遅かったじゃないか」  真っ暗な部屋のベッドから、黒い影がゆらりと立ち上がった。   「あ…」  彼が来て、待っていたようだ。  低く抑揚のない声は、彼の機嫌のバロメーターの最低値を指している。  叱られる!    私はぎゅっと目を瞑った。  しかし。  闇の中の長い腕は、私をふうわり、優しく抱きすくめただけだった。 「居なかったから…心配した」  切なげな声が、大きな体躯が震えている。 「あ、あの、実はね…」  弁解しようと開いた口に、彼は細い人指し指を押し当てた。
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