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「悪い。
信じてはいたが…
電話が置きっぱなしだったから…
つい履歴を見てしまった」
恥入った様子で告げた彼に、ふるふると首を横に振ると、彼はホッと息を吐いた。
「…会えたのか、父親に」
「…はい」
「そうか。良かった」
この上なく優しい囁(ささや)きの後、彼は私に柔らかいキスを落とした。
たちまち全身に、擽ったい感覚が走る。
「もう、黙って居なくなったりするな」
「ん…」
「本当に、絶対だぞ?」
「う…ん」
やだ、タカトラさんってば。
さっき私がお父ちゃんに言ったのと、全く同じ事言ってる…
可笑しみと哀しみが胸に同時に押し寄せて、私の瞼は急速に熱くなった。
暗闇の中、それを目敏く涙を見つけた彼が、人差し指で頬の滴を優しく拭ってくれる。
「美咲、愛してるから…」
「私も…タカトラさ…ん」
彼は、大事そうに私を抱え込むと、一つになってベッドに倒れ込んだ。
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