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皆から「キブンさん」と呼ばれている彼は、気さくで面倒見の良い先輩社員。
27歳、独身かつ爽やかな長身イケメンときて、当然女子からの人気も高い。
かく言う私も、実は秘かに憧れていたりする。
「あのさ。
俺らこれから、フロアの若いヤツ集まる飲み会行くんだけど。
良かったら四葉サンも……どう?
勉強もいいけどさ、こういう付き合いもたまには…ね?」
「ええっ?」
思わず声が裏返った。
彼が“いいだろ?” と振り返ると、ほかの二人もニコニコと頷いている。
“ハイ、喜んで!”
喉まで返事が出かけたところで、ハタとオニの顔を思い出した。
そうだ、昨日から私は悪魔のシモベ。
そんな楽しい自由など、与えられる筈もない。
私はぐっと涙をこらえ、誘いを断った。
「それが…藤城課長に言われてまして……」
“ああ、そっか” 彼は残念そうに嘆息した。
「なら仕方ないね、またの機会に」
先輩方は出て行ってしまった。
さすが、オニの名前は効果抜群だ。
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