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そんなある日。
事情を知らない育児休暇中のメイドさん、オオガミさんがアカチャンを連れてやってきた。
「久っしぶりぃ~」
相変わらず呑気な彼女は、ベビーカーを押しながら、私を見つけてニコニコしながらやって来た。
ちょっとした挨拶の後、改めてベビーカーの中を覗き込むと、その男の子は人見知りもせずニコッと私に微笑みかけた。
「この冬に1歳になったんですヨ」
ベビーモデルでもやれそうな、端正なお顔を見ると、彼女のノロケも全くホラではなかったようだ…
ちょいっと頬に触れてやると、天使のように微笑んで、私の指を小さな掌でキュっと握り締めてくる。
ミルクの匂いに、ほわほわと柔らかいちっちゃな手。
「可愛いですよね…アカチャンて」
「そりゃあもう!」
前にも増してユルんだ顔からは、愛情がダダ漏れだ。
私はふと、沈んだ声でポツリと言った。
「どうかしてますよね……そんなカワイイ子を手放すなんて」
彼の母も、私の母も____
「エ……?何を言い出すかと思えば。
だ、ダメですよ?この子はあげませんからね?」
それを聞いた彼女は、何か勘違いしたらしい。ギクリと顔を強張らせ、慌ててベビーカーの前に立ちはだかる。
そんな彼女に気づかない私は、フウッと溜め息をつくと、さらに沈んだ声で問いかけた。
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