ドS王子の結婚式

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「お父ちゃん、私ね_____」  父は最初、“へー” とか “ほー” とか声を上げ、頷きながら聞いていたが、最後には難しい顔で腕組みをし、うーんと唸ってしまった。  それを見ると、やはり後ろめたい気持ちに駆られて、ぎゅっと唇を咬みしめた。  重たい沈黙の後。 「……そりゃあ…美咲、辛かったなあ。  ごめんな。父ちゃんのせいで、お前にそんな思いまでさせて」  途端、  こらえていた涙が溢れだした。  まわりに変な目で見られないよう、懸命に嗚咽を飲み込んでいると、心配そうな父の顔が、ぐにゃりぐにゃりと歪んで見えた。  長い沈黙の後___ 「エライ子だなあ…美咲は」  私の頭を撫でると、父はポツリと呟いた。  それから言葉を選ぶように、訥々と語り始めた。    そのモノローグは、  私が初めて耳にする、父と母とのストーリー。
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