ドS王子の結婚式

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 ……意地もあったし、何より認めたくなかったんだろう。  母ちゃんは、遠くに行ってるだけなんだって、俺は思い込もうとしてたのさ。  お前にさえも言わずにな。  俺はいっつも、自分の事ばっかりなんだ。  「だから何が言いたいかっていうと」  父は一端そこで言葉を切ると、潤んだ瞳で私を見据えた。  ___________  お前には可哀想だけど、俺はその恋を応援しちゃやれねえ。  父ちゃんはバカだから、やってみなきゃ分からなかったけど。  俺がワガママ通したばっかりに、母ちゃんにもお前にも。  それから、向こうの親にだって辛い思いをさせたんだ。  それに_____  「やっぱり美咲には、お日様の下を歩いてて貰いたいもんな、なーんて…」  ちょっとキザだったか?  照れ臭そうに笑った父に、私は縋ってまた泣いた。 「うぇ…っく…お父ちゃん……苦しい…よぉ」 「よしよし、いい子だ。 お前はホンット、いい子だなあ…」  父は、私の背中をいつまでも撫でていてくれた。  母は私を捨てたわけではなかった。  それは嬉しい事には違いないけれど…  真実は  もっと残酷だった。  それからも、たくさんたくさん泣いて、私の心はやっと固まった。
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