ドS王子の結婚式

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 …良かった。    これでやっと、タカトラさんは押しも押されもしない、立派な総師になったんだ。  小さい時から、色んなものを犠牲にしてまで志した思いを叶えて。  涙が、鼻水が止まらない。 「美咲、ソロソロ時間だぞ。 ……お前…ホンとにいいのかよぉ……」  情けない声で言いながら、父が私の肩を抱いた。  後ろ髪を引かれながらも、  私は決然と頷いた。  春風に、桜吹雪がサァッと舞った____  昨日のこと。  黙って姿を消すことに決めた私は、こっそり、残りの借金を彼の口座に振り込んだ。  住民票はまだ移せない。足取りを知られてしまうから。  会社にはものすごい迷惑をかけてしまうが仕方がない。向こうに着いたら課長には、一度謝罪を入れるつもりでいる。  そして私が最も気に病んでいた、彼に残す最後のメッセージ。  月並みで、少し古典的ではあるけれど、それを私は、置き手紙という形で部屋に残しておくことにした。
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