ドS王子の結婚式

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_________ 「美咲…」 「待った!」  甘い声で、襟元のボタンを外しにかかっていた彼の手を、私は軽くペチッとやった。 「今夜は…イヤですよーだ」 「何だと?」  お預けを食らって、ムッと顔をしかめた彼に、私はぷっくりと頬を膨らませた。 「私だって……結婚前夜くらい、キヨくありたいですもん」 「ちっ…何を今さら」  ブツブツ文句を言いながらも、シブシブと手を引っ込めた彼だったが、 「ま、いいか。  そうだな、確かに明日は、俺たちにとっての記念日だ」  気を取り直したように機嫌よく言うと、私の横にゴロリと寝そべった。 「あの…1つだけお願い、いいですか?」 「何だ、やっぱり抱いてほしいか」 「違います!  あの……明日、式が終わって落ち着いたら。 ……一度、ここに寄って貰えませんか?」 「新しい住まいじゃなくか?……まあ別に構わないが」  彼は本当に部屋を借りてくれていた。  とうとう、1度も入ることのなかった部屋を。
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