ドS王子の結婚式

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_______ 「ヤッさん(父の呼び名)、そろそろ… 船の時間があっからよう」  軽トラの運転席から、父の友人が遠慮がちに呼び掛けた。 「おうよ……さ、美咲」  トンっと父が背中を叩いた。  私はとうとう堪えきれなくなってしまった。 「う、う、ウワアアアン、父ちゃああん!」 「美咲イイぃ~~」    その後すぐ、私達を乗せた軽トラは出発した。  荷台に隠れていた私は、そこでもたくさん、たくさん泣いた。  重ねてきた思い出だけが、頭の中に浮かんでは消えてゆく。  私の恋はあまりに未熟で……  悲しみの処理の仕方さえ分からなかった___    どうして?  どうして私だけ、  我慢しなくちゃいけないの?  大好き、大好き、愛してる。  離れたくない、別れたくない。  思い出になんかしたくなかった。未来を一緒に歩きたかった。  彼だって、私が好きだと言ってくれたのに…  どうして今  あの人の隣に立っているのは私じゃないの!
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