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その夜。
パーティ会場であったホテルの最上階の一室で、前を通りがかったギャルソンが、ビクッと肩を揺らすほどの大爆笑が響いていた。
「ヒーッ……プアッ。
くっ、苦ひいっ…」
そう。
噂のレディ『笑わぬ妃』とは………
私だ。
パラリとツケマツゲが落ちる。
マナーコンサルティング会社から派遣された先生が、ブフッと吹き出すのをガマンして、ずれた眼鏡をキュッと持ち上げた。
「……お済みになりましたか?奥様。
今日の演技はまあまあでした。
が、途中で涙目になっておられましたよ?」
「だって私、笑いのツボが浅いんですよぉ。
全く、皆さんが悪のりして、変なキャッチコピーを作るから」
コホン。
咳払いを一つすると、彼女は取り澄ました顔で告げた。
「仕方がありません、奥様は大変物覚えが悪く、喋れば必ずボロをお出しになられますから。苦肉の策というものです」
「うう…酷い…」
そんなやり合いのさ中。
間をおいて、丁寧なノック音が2度聞こえた。
「騒がしいな」
「タカトラさん!」
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