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「タカトラさん、これって…
ウワー、何だか賑やかになりそうですね」
目を丸くして見ていると、彼は悪戯っぽくニヤリと笑った。
「ああ、ワガママなヤツばっかりだ。
大変だぞ?
お前がさ、こいつら全部の“カナメ”になるわけだから」
「げっ…」
サーッと青ざめていた私に、彼は眉尻を下げて頬を染め、困ったような照れたような、何とも言えない表情(カオ)をした。
「…自分でも意外だったんだが。
俺は結構______
寂しがりみたいだ」
「えっ…」
ふ、ふふっ。
なーんだ、それなら、私はずーっと前から気付いていましたよ?
込み上げる笑いを隠しながらも私は、神妙な顔で頷いた。
「………。
あれ?ここ、残すんですか?」
私は、図面のある一点を指差した。
広い庭園の木立の中に、あの離れのボロ小屋がひとつポツンと残っている。
「ああ。色々と思い入れが深い場所だからな」
「へえ…」
実利主義の彼らしくもない。
だってそこは、小さな頃からの彼の唯一の安息の場所で…かつ、私達が二人だけの時を作り上げた空間だ。
ほんの少しの可笑しみとともに、じわりと心に暖かいものがこみ上げた。
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