今日からお前は俺のモノ

私のメイド生活

『ここの皆さん、もの凄～く人使いが荒いですからねえ～』

　それからも一緒にお掃除する傍ら、彼女は雑談まじりに色んなことを教えてくれた。

　藤城家の家族構成なんかもその一つだ。

　まずは当主の弥一郎(ヤイチロウ)様。言わずと知れたフジシロコーポレーション総帥は、藤城課長のお父さんで御年なんと70歳。
　戦後に一度解体されて、窮地に陥った会社を一代で立て直した伝説の人で、そのカリスマ性もさることながら、恐るべき独裁者。精力的なワンマン経営で知られている。

『今は海外に行ってて居ないから、四葉ちゃんはラッキーでしたよ。
　気位が高いし、なにせ変わってますからねえ。
　うちの旦那の比じゃないですよ、全く…』

　なんでも今は中東進出を目論んでいて、御自ら現地で陣頭指揮をしているんだそう。
　それだけならまだしも、抱えの執事、運転手など館の使用人を全て連行してしまったというんだからスゴい。
　いずれにせよ、かなり強烈な人物のようだ。

　もうしばらく、現地から帰ってこない予定と聞き、胸を撫で下ろしたのを覚えている。

『それから、大学生のレイカお嬢様。
　このヒトは何というか…贅沢で。
　たま～にしか帰らないのに、お部屋の準備ができてないと、叱られちゃうんですよね～』

　課長の妹にあたるそのヒトは、都内のお嬢様大学に在学中。
　けれどいわゆる遊び人で、課長とも折り合いが悪く、友人の家を渡り歩いて、もう長いこと家に帰ってこないんだとか。