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というワケで今朝は、藤城課長を後部座席に乗せると、(エライ人は運転は無論、助手席になど乗らないんだそうだ)
左ハンドルをプルプルと握り締めながら、バカデカイ外車で出勤する羽目になった。
因みに私、運動神経だけはいい方である。そこ “だけ” は両親に感謝している。
「遅いな」
朝の渋滞に巻き込まれ、彼はイライラと呟いた。
「仕方がないですよぉ、通勤時間なんですから」
そんなことよりも私は、課長と一緒に通勤しているこの状況を、誰かに見咎められることが心配だ。
一緒に遅刻なんかしようものなら、課の皆に何を言われるやら。
憧れのヒト、香河さんに誤解されでもしたら大変だ!
「そこんとこカチョー、どうするんですか?」
「お前と俺だぞ?何も起こりようがない」
無礼な事を言ってのける彼に、私はささやかな抗議を試みた。
「へえぇ~、よく言いますね。
こないだ起こしに行った時、危うくベッドに引きずり込もうとなさったのは、一体どこの誰でしたっけ?」
「ぐっ、あれは……そうだ、間違えたんだ。
我が人生の最大の汚点だった」
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