課長のホンキとシモベの覚悟

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 バックミラーをチラッと覗くと、腹立たしいことに彼は、大袈裟に頭を抱えている。  シツレイな、それを言うならこっちの方だ!  朝イチで半裸の男に抱きつかれ(コイツは何故か、いつも上半身ハダカで寝ている)、チューされそうになったオトメの身にもなって欲しい。  朝の弱い課長に、間違いで手籠めにされるなんて、冗談じゃない!  まあ、寝惚け眼だったとはいえ、美しいお顔で迫られた時には、少しドキリとしてしまったが…  その光景を思い出し、プルッと震えた私に、彼はケロリと言ってのけた。 「まあ安心しろ。車は一般社員は入れないようなトコロに入れるから。  気になるのなら、出勤時間もずらしてやろう」 「…左様で」    高飛車に言うと、彼は長い足を優雅に組んで再び窓の外の渋滞を眺め始めた。 「しかしカチョー、どうして今日は車なんです?」  いつも地下鉄・バスなのに、いったいどういう風の吹き回しだろう。 「ああ、今夜はちょっと……難しい接待があってな。 クルマでのお迎えが先方の望みなんだ」 「って事は………私も?」 「そう、今日は1日運転手。 ヨロシク頼むぞ」  ううっ、聞くんじゃなかった。  どうやら今日は、長い1日になりそうだ。
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