課長のホンキとシモベの覚悟

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 終業後。  私は課長よりひと足先に、VIP専用駐車場のクルマの中で待っていた。  ほどなく藤城課長がやってきて、丸の内に向けて発進する。 「でも、カチョーが1人で接待なんて……珍しくないですか?」  信号待ちの手持ちぶさたに、ふと気になったコトを尋ねると、   「今日のは別口。 藤城の、親父の代理としての接待だ。課の部下は使えない」  彼は、ことのほか憂鬱そうに返事をした。 「ほぇ~、天下の藤城にでも、ヘリクだらないといけない相手があるんですねぇ」 「俺たちは商人だ。 士農工商で言えば一番下。カネでどうにもならない部分を、カネでどうにかしなくちゃならない」 「ホー……」  サッパリ分からないけど、まるで時代劇みたいだ。さしずめお相手は “お代官サマ” といったところだろうか。    ふと、昨日見ていたテレビのコントを思い出し、プッと吹き出していると、彼はもう一度重たい口調で呟いた。 「失敗は……赦されない」  ……そっかあ。  若(バカ)殿様も、意外と大変なのかも知れない。
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