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(いっ、ゃあ…)
そんな、どうしたら…
課長に目で助けを請う。
しかし彼は、拍子に合わせて一気飲みの最中で、こちらには全く気付いてない。
『…失敗は…赦されない』
ふいに、彼の重たい口調が目に浮かんだ。
許しを乞うように見つめると、“センセエ”は嬉しげに目を細め、クッと口の端を上げた。
耳に囁く。
(そそるねえ)
イイぞ、その顔…もっとやれ。
そうやって俺に媚びるといい。
最初の印象からはすっかり変貌してしまった、下卑た表情が、私に語りかけてくる。
ああ、そっか。
今になって、やっと分かった。
藤城課長は。
藤城貴彪は。
格好悪くなんかない。
ずっとずっと我慢していた。
だって彼の後ろには
グループ社員10万人、系列合わせて100万人。
その為に、誰より気位の高い彼がそのプライドを切り売りし、ただひたすらに彼らに媚びて_____
あれは、藤城の後継者、総師を背負おうとする彼のホンキだったんだ。
それならば。
私のせいで、ダメにするワケになんか絶対にいかないじゃないか。
えーい、ちょっと触られるくらいがなんだ。
こんなもの、減るものじゃない!
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