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なのに今日。
今、皆の前で流れるような美声でスピーチをしているやたら若い管理職、藤城貴彪(トウジョウ タカトラ)課長。
私はこれからこの御方に『退職願』を差し出さねばならない。
超のつく美声、美形、美スタイル、花形部所の若き課長。
何でも彼、噂では仕事にもプライベートもヤり手の有能完璧人間だとか。
しかし私は彼が苦手だ。
何故ならば…
自慢じゃないが、専ら皆さんの雑用を主務としている私は、幸い先輩方の覚えもめでたく、可愛がってもらっている。
勿論、仕事量の多い課長の雑用は他より多く、よく呼ばれて行くのだが……
どうやら私、少しトロくさいらしく、彼の迅速過ぎる指示には追い付いていけないようなのだ。
『四葉ぁ…テメェ、いいか加減にしろよ。
ちゃんと聞いてたんだろうなぁゴルァ…』
『ひいぃっ、ずまみぜんっ』
と毎回こんな感じになっている。
その結果、彼の私への呼び方は、入社したての4月から
『四葉サン』→『四葉美咲っ!』→『四葉ァ(怒)』
とみるみる剣呑に変わっていった。
以上、たった半年で私は彼の本性に気付いてしまった。
コイツの美々しい皮をひとめくりすれば、パワハラ、理不尽、いじめっ子、表裏ありまくりの冷血人間。
私が退職など願い出ようものならば、“お好きにどうぞ” と極上の笑みを浮かべるだろう。
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