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一瞬ためらった後。
「そんなつもりは、誓ってない」
藤城課長はフワリと軽く、突き離せる程度の力で私を懐に抱き寄せた。
「…カチョー?」
戸惑って、上げようとした頭を大きな掌がぐっと止める。
「あのジジイはな…いくつもの学校の理事をやっているエライさんだ。
未成年だと言っとけば、妙なマネは出来ないだろうと……そう考えていた。
配慮が足らなかった」
“すまない” 彼は重たい口調で告げた。
「…そんな…の…」
彼がよっぽど王様気質なのか、はたまた私がドレイ体質なのか。
ゲンキンなもので、その言葉と緩やかに背中を撫でられる心地好さにすっかり満足してしまい、
「それなら…いいんです」
次の瞬間に、私はもう笑っていた。
少しして、背中の手を震わせながら彼がポツリと呟いた。
「俺だって、本当は……
あんな姿、オマエに見られたくはなかったさ」
その言葉がやけにココロに響いて_
いつの間にか私の怒りの矛先は、彼の味わった屈辱へと、すり変わっていった。
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