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言いつつも、全く悪びれた様子はない。
オタオタと画面を隠しながら、私は猛然と抗議した。
「全くいつもいつも…
ここは夜のオトメのプライベート・ルームなんですからねっ」
「イヤ、どうもバアサンの場所ってイメージが強くてな」
小さな頃から他人に囲まれて育った彼は、肉親よりも他人とのプライベートの垣根が低いようだ。
彼は何食わぬ顔でコタツの脇に腰かけた。
私は、イイトコロだったテレビドラマを諦め、後ろ手でそっと画面を消すと、向かいに座って彼に尋ねた。
「で、ご用件は?」
「うん。今夜は……眠れなくってな」
「ま、まさか……
添い寝……とか?」
咄嗟に両腕で身を庇う。
「違うわ、一体何を考えてるんだ。
大体、変な番組ばっか見てるからそういう発想になるんだ」
うっ、バレてる……
「デスクワークが多いと肩が凝る。アレ、やってくれ」
「あー、はいはい。今夜はおデートではなくお仕事でしたか」
「………」
私のイヤミには答えずに、彼は黙って後ろを向いた。
この間、急な肩凝りを訴えた彼にしてあげた肩揉みがよほど気に入ったらしく、以来ちょくちょく、突発的にやって来るようになったのだ。
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