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あ、そこ。違う、もっと右」
「………」
私は懲りずに反撃を試みた。
「全く…若いのにオジサンみたい。カチョーのこんな姿、会社の皆さんが知ったら何て言うか。
マツヤマ女史なんてきっと…」
課のお局様、マツヤマ女史は既婚のオバチャンだが、藤城課長の熱狂的なファンなのだ。
「ああ。俺とオマエの関係性を疑われて、さぞや楽しい展開になるだろう。
オマエの大好きな香河だってさ…」
「う、うわー、カチョーが何故それを」
香河さんのコトは、誰にも言ってないはずなのに。
「四葉は分かりやすいもん。知らない奴はいないぞきっと」
「ま、マサカ…香河さんも知って?」
「さあな…クッ」
よくみると、肩を震わせて笑っている。
からかわれたんだ、悔しい!
「でもホントに上手いな…お前。
こんなのは…初めてだ…」
眠たげに呟く声が妙に艶っぽい。
ドキッと打った心音を誤魔化そうと、私はわざとおどけ口調で話し出した。
「へっへ~、昔ね、ちょっと本格的に勉強したことがあるんです。
父が土木作業員で…父子家庭だったもんですから。
いつもあっちこっち痛い痛いって言うの、心配でね」
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