マッサージの効能

5/6
前へ
/283ページ
次へ
「でも父親って…アレだろ? オマエに借金押し付けて夜逃げした…」  ふと手を緩めた。 均整のとれた背中が、似ても似つかない父親のそれと重なる。 「……父ちゃんはいい加減だし、ダマされやすいですから。  聞いたことはないけど…多分母ちゃんにもそれで逃げられたんじゃないかと思うんです」    フフッ、自然と笑みが漏れた。 「でもね、とにかく優しくって。疲れて帰ってきてからも沢山遊んでくれたりしてね。 だから苦労もしましたけど、どうしても憎めないんですよ」 「そうか…父親とは雲の上に有るものと…認められなければならないものと。  そう教わってきたが…違うもんなんだな」 しみじみと彼は呟いた。 「随分とキビシイんですね。 ま、うちは庶民ですから」  少しの沈黙が流れた後___  藤城課長は寝言のように気怠く、眠たげな声で呟いた。
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4704人が本棚に入れています
本棚に追加