4704人が本棚に入れています
本棚に追加
「でも父親って…アレだろ?
オマエに借金押し付けて夜逃げした…」
ふと手を緩めた。
均整のとれた背中が、似ても似つかない父親のそれと重なる。
「……父ちゃんはいい加減だし、ダマされやすいですから。
聞いたことはないけど…多分母ちゃんにもそれで逃げられたんじゃないかと思うんです」
フフッ、自然と笑みが漏れた。
「でもね、とにかく優しくって。疲れて帰ってきてからも沢山遊んでくれたりしてね。
だから苦労もしましたけど、どうしても憎めないんですよ」
「そうか…父親とは雲の上に有るものと…認められなければならないものと。
そう教わってきたが…違うもんなんだな」
しみじみと彼は呟いた。
「随分とキビシイんですね。
ま、うちは庶民ですから」
少しの沈黙が流れた後___
藤城課長は寝言のように気怠く、眠たげな声で呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!