4704人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなわけで私は今、暖め直したコンソメスープを口に運ぶ彼を、頬杖をついて眺めていた。
キチンと背中を伸ばした姿勢。
小さい頃から叩き込まれたのだろう、一つ一つ所作は流れるように美しい。
ふと口元に目がいった。
男性にしては細くて長いキレイな指が、銀のスプーンをキリッとした口元に運ぶ。
艶めいた唇が、銀色の縁を柔らかに濡らす。
デート、かあ…
大人だもん、やっぱりさ。『キス』とかもしちゃってるよね。イヤ、それよりもっとスゴい事を…
ヤダヤダ、私ったら何考えてるの?
想像の範囲が限界を超えた時、端から不審げな声がした。
「さっきから何人をジロジロみてるのかと思ったら、オマエ、何を赤くなってるんだ」
気がつけば、お代わりのお皿を付きだしている彼が、怪訝な顔で眺めている。
あわわ…
慌てて席を立った私に、彼はニヤリと笑った。
「何を考えてたか、当ててやろうか?」
「け、ケッコウです!」
“分かっているぞ”
私の子供っぽい頭の中など、見透かしたように笑う彼。
意地悪、アクマ、大っ嫌い!!
彼の前にドカッとスープ皿を置いて、顔を真っ赤にして膨れていたら、サルみたいだとまた笑われた。
最初のコメントを投稿しよう!