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そんなイジワル課長との生活にもすっかり慣れたある日。
この頃になると、不思議と “気が利く” と認められるようになり、仕事も徐々にやりがいのある内容を与えられるようになってきた。
そうして何とこの度は、アコガレの香河サンのプロジェクトにも加えて貰えたのだ!
私は俄然ハリキッた。
「香河サン。例の資料の叩き台、見てもらえますか?」
「ああ早いね…どれどれ」
私はデスクの傍らで、ドキドキしながら眉根にシワをよせる彼の返事を待つ。
しばらく後。
「スッゲエ…完璧だ」
彼は会心の笑みを浮かべた。
「やるじゃないか、四葉ちゃん。これなら課長の決裁、一発で取れるぞ」
思わず2人でハイタッチ。
弾んだ足取りで課長デスクに向かう彼の背中に、私はチラッと舌を出した。
実は……カラクリがある。
さっきのおとといの夜からご機嫌を取りまくって、藤城課長ご本人から直接レクチャーを頂いたのだ。
お陰でかなりヘトヘトだったが。
と、ニコニコしながら戻ってきた香河サンが、
信じられない事を言い出した。
「…じゃあね、四葉ちゃんにささやかな御褒美。
今日の昼飯、俺の奢りな」
「ええっ!ホントに?」
「もちろん。行きたいとこあったら言って。
それとも……迷惑かな?」
「とと、トンでもございません、ゼヒとも」
その午前中は、フワフワと気分が浮きまくって、全く仕事にならなかった。
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