課長の背中に

2/15
前へ
/283ページ
次へ
 しかしそれは、思った以上に過酷な節約生活で……そのうえに悪いことが重なった。   まずその1。  土曜日のメイド、オオガミさんがとうとう産休に入ってしまった事。  『まだちょっと早いんですけどね~。  ダンナサマが心配しちゃってて♪』  独特の、大盛りのノロケ話ももう聞けないかと思うと少し寂しい。 『きっと大恋愛だったんでしょうね、羨ましいですよ』  恋愛を禁じられたばかりの身。  皮肉混じりにそう言うと、彼女は少し苦笑いしていたが、 『四葉チャンにはね。  きっとこれから、すっごいシアワセが訪れます。ニンプさんの超能力、ラッキーオーラが見えますもん!』    あまりに自信たっぷりに言ってのける彼女に、いつものリップサービスだとは分かっていても、ついウルッときてしまった。 『オオガミさぁ~ん…』  すると彼女は、少し目立ってきたオナカに私の手を当てさせてくれた。 『ホラね?』  小さな命は、彼女の言葉に頷くように、お腹の中から私の手をぐいっと蹴った。  それでビックリしてしまった私は、本当にそんな気がしてきた。 『生まれたら見に来てね~』  いつまでも手を振りながら、ニコニコと彼女は去っていった。  で、そこまではよかったのだが___  問題はその後だった。
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4704人が本棚に入れています
本棚に追加