課長の背中に

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「こいつはな、俺のポケットマネーで雇ってる。おまえの世話代は入ってない。 ……俺の専属だ」    ポケットマネーだったのか。  格差に愕然とする私をよそに、レイカ様は嘲りを込めた薄笑いを浮かべた。 「へえ~、なんだそういうコトか。  兄貴はとうとうロリータ趣味に…」 「違うわ! 早く来い、四葉。バカが伝染るから、コイツにはもう関わるな」 「…ま、どっちでも良いけどね」  捨て台詞を無視し、私の腕を引っ張って部屋を出ようとする彼。  と、彼女はもう片方の私の手を掴んだ。 「ちょっと待ちなさいよ!」  ニッと笑ったレイカ嬢を、課長は不機嫌そうに睨み付ける。 「レイカ、もう話は済んだ筈だぞ」 「兄さんじゃない。あんたよ、あんた。 ねえ。お金、払えばいいんでしょ?」 「えっ!」 「何だと!?」 「私からのバイト代。いつまでいるか分からないから、1日につき10000円でどう?」 「バカなことを…」 「やります!!」  次の瞬間、私は思わず叫んでいた。 これは新規の収入源……返済期間が早まるじゃないか!  ド貧民、形振(なりふ)り構っていられない。すかさず目の前のニンジンに食いついた。 「決まりね」 「………チッ」  勝ち誇ったレイカ様に、忌々しげに舌打ちする藤城課長。 「俺の食事が先だ…行くぞ、四葉」  私はペコッと会釈すると、踵を返して背を向けた彼に躊躇いながら従った。 「あ、私の分もヨロシクね~」  背中から明るい声がした。  何と。  ワガママっ子が倍に増えた……
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