課長の背中に

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 でもそれは、完全なオーバーワークだったんだ。  歪みはすぐにあらわれた。  私にクリスマス・イブなどといった楽しいイベントがあるはずもなく12月は過ぎて、1月。  年末年始で会社はないものの、通いのメイドやコックさんも皆休みだったから、私は家事を一人でこなさなければならなかった。  その日、藤城課長は親族一同の集まる『新年互礼会』だと言って、朝から出掛けていた。  パリッとキメた正装は、さながら現代の王子サマのよう。ああいった服装が滑稽に見えない人は、中々いないかもしれない。  『オマエも顔出せよ』と昨夜云われていたレイカ嬢は、早々に姿を消していた。  この兄妹は、ソックリな癖にとっても仲が悪いんだ。  午後。  掃除を済ませた私は、ドーベルマン達のエサやりをしていた。  飛びっきり寒い日で、イギリス調の広い庭園には、うっすら白い雪が残っている。 「さぶっ」  オープンガラスのテラスから、震えながら庭に出ると、ワンちゃん達は嬉しそうに寄ってきた。 「オー、よしよし」  最初は獰猛に見えたドーベルマン達も、慣れてしまえば可愛いもの。近頃は、手ずから餌をあげられるまでになっている。  と、一瞬クラッと視界が歪んだ。 「クゥン…」  食べ終わった一匹が、心配そうに鼻を鳴らす。 「大丈夫だよ」  ニッと微笑んでヨシヨシしてやると、嬉しそうに尻尾を振った。
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