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その直後。
やっと一息と休憩を取ろうとした時、一本の電話が掛かってきた。レイカ嬢だ。
「あー、今駅にいるんだけど。
傘忘れちゃったのよね~、直ぐに持ってきて?
黒の水玉のヤツね」
言うだけいって、電話は切れた。
休む間も無く、私は傘を持って駅に急いだ。
だが。
走って駅に着いた時、彼女の姿は無かった。電話にも出る気配はない。
そう、彼女は……
自分の言ったことをしばしば忘れてしまうのだ。
大方、私に頼んだのを忘れて友人でも呼び出したのだろう。
少しだけ待って、再びトボトボと来た道を帰る。
分かっている。レイカ嬢は居丈高な言い方こそするが、課長のようなハラはなく、直情的なタイプの女性(ヒト)。
本人に悪気は全くない。
分かってる。
分かってはいるけれど。
寒くって、辛くって…とても惨めだ。
カードを通すと、大きな門がギギイと開いた。ワンちゃん達が、私を見つけて駆けてくる。
と、急に目眩が酷くなり、足がグラリとぐらついた。
ああ、ダメだ…ちょっと疲れたな。
仕事がまだ残ってたけど、ちょっとだけ横になろう。
ちょっとだけ……
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